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なぜ人手不足なのに賃金が下がるのか | エコノMIX異論正論

2012年末に安倍首相が登場して「デフレ脱却」を掲げ、彼の指名した日銀の黒田総裁が2%のインフレ目標を宣言してから2年がたった。しかし3月末の消費者物価上昇率(生鮮食品・消費税分を除く)は年率0.2%。今後ゼロからマイナスになると予想され、デフレに逆戻りだ。昨年の成長率は0%で、民主党政権のときより悪い。いったい「アベノミクス」とは何だったのだろうか。

 そんな中で安倍政権が唯一の成果として誇っているのが、雇用の改善である。たしかに3月の完全失業率は図のように3.4%と前月から0.1%改善し、ほぼ完全雇用といっていい状態になった。

しかしよく見るとわかるように、完全失業率はリーマン・ショックで2009年に大きく上がったあと、2010年から下がり始めている。2010年といえば民主党政権に交代した直後で、その後は2011年の東日本大震災の後に大きく下がった。これは復興需要によるものだろうが、2012年にはやや上がった。

 アベノミクスが始まった2013年には、失業率はやや上がったあと下がったが、全体の低下率は民主党政権の時代とほとんど変わらない。つまり雇用の改善はアベノミクスのおかげではなく、リーマン・ショックで急激に悪化した景気が回復した循環的な現象なのだ。

 しかし失業率が下がるということは労働需要が増えるということだから、賃金は上がるはずだ。ところが3月の実質賃金は前年比-2.6%となり、23ヶ月連続でマイナスになった。政府の懸命の「賃上げ要請」にもかかわらず、春闘相場も不発だった。なぜ雇用が改善して一部では人手不足ともいわれるのに、賃金は下がるのだろうか?

つまり雇用が改善した最大の原因は、非正社員の増加による自然失業率の低下だと考えられる。これは労働市場が流動化したということだから、雇用が増えても実質賃金は上がらない。自然失業率は労働需要と供給の一致する均衡水準なので、失業率がその水準に達するまで平均賃金は下がるのだ。

 失業率が下がったのはいいことだが、それはアベノミクスのおかげではなく、こうした労働市場の構造的な変化によるものだ。非正社員の比率は37.6%まで上がり、正社員との賃金格差が拡大している。これを雇用規制の強化で止めることはできない。規制を強化した民主党政権のもとでも、正社員は一貫して減っている。

 国会でも労働者派遣法の審議が始まったが、いまだに民主党などの野党は「規制強化で正社員を増やす」という発想で派遣労働の規制緩和に反対している。それは政府がこういう労働市場の変化を無視して「アベノミクスで賃上げを起こす」というのと同じぐらい滑稽な話である。

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つまり、正社員がどんどんと減り続け、同時にアルバイト写真が

どんどんと増え続けているという現象だ

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