【6月8日 AFP】フランスのベルサイユ宮殿(Palace of Versailles)で9日から始まる現代彫刻家アニッシュ・カプーア(Anish Kapoor)氏(61)の回顧展が、物議を醸している。出展作品の1つについてカプーア氏が「女王の女性器」だとコメントしたためだ。
問題となっている彫刻は、鉄と石を素材とした高さ10メートル、長さ60メートルの抽象作品。年間500万人が訪れるベルサイユ宮殿の前庭に設置され、じょうご型の開口部が宮殿側を向いている。カプーア氏はこの作品に「Dirty Corner」という題をつけている。
英国を拠点に活動するインド出身のカプーア氏は先週、同作品について仏紙ジュルナル・デュ・ディマンシュ(Le Journal du Dimanche)に、あからさまに性的で、王を表現したものだと説明。「権力を握っている女王の女性器だ」と語った。具体的な女王の名は出さなかった。
これまでもさまざまな物議を醸してきたカプーア氏はその際、作品は「野心的」ではあるが、豪華なベルサイユ宮殿の規模を考えれば、やり過ぎとは思わないと述べている。
■「スキャンダル」と仏メディア
回顧展では他にも、白い壁に向けて男根を象徴する大砲から血液に見立てた赤いワックスが「発射」される彫刻が宮殿内に展示されており、ラジオ局ユーロップ・アン(Europe 1)など仏メディアは、カプーア氏は挑発的な作品でスキャンダルを引き起こそうとしていると非難している。
保守系の日刊紙フィガロ(Le Figaro)は、カプーア氏の現代的な作風と、17世紀を象徴する歴史あるフランス王宮の優美さという「2つの異なる芸術を対比させるために、ベルサイユをオブジェ扱いしている」と作品を批判した。
■「何が問題か分からない」
一方、当のカプーア氏は5日に開いた記者会見で、「女王の女性器」という表現について「口にしたかどうか覚えてない」と述べ、報じられている自らの発言に距離を置いた。ただ、回顧展の一部に関して「女性器」という言葉を使ったことは認め、その上で、生殖器は誰もが持つものであり「何が問題なのか分からない」と語った。
仏当局は2008年からベルサイユ宮殿を現代美術の展示場所として開放しており、同年には米美術家ジェフ・クーンズ(Jeff Koons)氏、10年には日本の村上隆(Takashi Murakami)氏の個展も行われている。11月まで開催されるカプーア氏の回顧展は、これまでの中で最も複雑な展示といえる。(c)AFP/Marc BURLEIGH
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